保健室の雑感、不登校支援、養護教諭の教員採用試験に関する雑記ブログ

<児童虐待>学校と養護教諭の役割、法的根拠。|教員採用試験対策

児童虐待は、社会問題化している子供の健康課題です。

子供たちを児童虐待から守るために、学校は何をするべきなのか、
養護教諭には何ができるのかをまとめました。法的根拠を中心に整理しました。

虐待を防ごうとする取り組みも広がっています。

児童虐待の現状 

現在の最新の情報では、「2019年の1年間に警察が摘発した児童虐待事件は1972件、被害にあった18歳未満の子どもは1991人で、ともに前年を約4割上回って過去最多」でした。

1年間におよそ2千件、2千人が被害にあっています😨

児童虐待の被害者数(2019年データ)
虐待による死者は54人
・夜間などに警察が一時的に保護した子どもも過去最多で5553人

虐待事件の内訳
・摘発した事件のうち、体を傷つける「身体的虐待」は83.2%。
・強制性交等などの「性的虐待」は12.5%
・食事を与えないなどの「ネグレクト(育児放棄)」は1.8%
・無視をしたり、子どもの前でパートナーに暴力を加えたりして心を傷つける「心理的虐待」は、認知が多いものの事件化は難しく、2.5%。

児童虐待が増えている理由は、虐待の数自体が増えているというよりは、
「通告の重要性が広く認知されたことによるもの」だと肯定的に受け取られてはいます。

 

児童虐待の種類  

「児童虐待」とは、
保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者)が
その監護する児童(18 歳に満たない者をいう。)について行う次の行為をいう。

(1)身体的虐待
 子供の身体に外傷が生じ、又は生じる恐れがある暴行を加えることであり、殴る、蹴る、激しく揺さぶる、熱湯をかける、首を絞める、タバコの火を押しつける、おぼれさせる、冬に戸外に閉め出すなどがある。

(2)性的虐待
 
子供にわいせつな行為をすること又は子供をしてわいせつな行為をさせることであり、子供への性交、性的行為を強制する、性器や性交を見せる、ポルノ写真の被写体に強要する、子供の目の前でポルノビデオを見せるなどである。

(3)ネグレクト(養育放棄)
 
保護者としての監護を著しく怠ることであり、適切な食事を与えない、風呂に入れない、家に閉じこめる(子供が学校に行きたがっているのに行かせない)、重大な病気になっても病院に連れて行かない、同居人による身体的虐待、性的虐待、心理的虐待を放置するなどがある。

(4)心理的虐待
 子供に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、子供が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他の子供に著しい心理的外傷を与える言動を行うことであり、言葉で脅す、無視する、心を傷つけることを繰り返し言う、他の兄弟姉妹と激しく差別するなどがある。

児童虐待の対応件数と構成割合 
 相談の種類別にみると、「身体的虐待」が 23,579 件と最も多く、次いで「心理的虐待」が 22,423 件となっている(図2)。また、主な虐待者別に構成割合をみると、「実母」が 57.3%と最も多く、次いで「実父」29.0%となっている。
     (平成 24 年度福祉行政報告例の概況(厚生労働省)より)

学校等の責務と養護教諭の役割

学校や教育委員会に求められる責務は、制度上、次の3点です。
養護教諭の担う役割と法的根拠についても整理しておきます。

学校の責務1.児童虐待の早期発見(児童虐待防止法第 5 条)

児童虐待の早期発見は、児童虐待防止法第 5 条に設けられています。

第五条 学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない
2 (略)
3 学校及び児童福祉施設は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。
  児童虐待の防止等に関する法律(平成 12 年 5 月 24 日法律第 82 号)

養護教諭の役割:児童生徒等の心身の状況を把握する(早期発見)

養護教諭は、「児童虐待の早期発見の観点から、児童生徒等の心身の健康に関し健康相談を行うとともに、児童生徒等の健康状態の日常的な観察(健康観察)より、その心身の状態を適切に把握すること」が重要です。

学校保健安全法 第9条
養護教諭その他の職員は、相互に連携して、健康相談又は児童生徒等の健康状態の日常的な観察により、児童生徒等の心身の状況把握し、健康上の問題があると認めるときは、遅滞なく、当該児童生徒等に対して必要な指導を行うとともに、必要に応じ、その保護者に対して必要な助言を行うものとする。

けがの対応を行う職務上、養護教諭は虐待に気付きやすい立場にあると言われています。
子どもの訴えに耳を傾け、子どもが発するサインを見逃さないようにするとともに、
情報を総合的に評価して「虐待の疑い」の早期発見に努めることが大切です。

また、毎年春におこなわれる健康診断も、早期発見の機会の一つとして重要です。
健康診断は、「身体測定、内科検診や歯科検診をはじめとする各種の検診や検査が行われることから、それらを通して身体的虐待及び保護者としての監護を著しく怠ること(ネグレクト)を早期に発見しやすい機会」となります。

学校保健安全法 第 11 条
市区町村の教育委員会は、学校教育法第 17 条第 1 項の規定により翌学年の初めから同項に規定する学校に就学させるべき者で、当該市区町村の区域内に住所を有するものの就学に当たつて、その健康診断を行わなければならない。

学校保健安全法 第 13 条
学校においては、毎学年定期に、児童生徒等の健康診断を行わなければならない。学校においては、必要があるときは、臨時に、児童生徒等の健康診断を行うものとする。

学校の責務2.児童虐待に係る通告(児童虐待防止法第 6 条)

第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
   児童虐待防止法より

この法令を根拠にして、虐待の事実が明らかでなくても、子供の安全・安心が疑われると思われる場合は、虐待の早期対応の観点から通告の義務が生じます。

養護教諭の役割:緊急度を判断するための情報を得る(情報収集・連携)

通告の判断は、管理職が行います。
養護教諭は、虐待の可能性があると判断された場合、適切に対応し、情報収集を行います。

特に対応が難しいと言われているのは、「性的虐待」についてです。

<性的虐待が実際に見つかるパターン>
 小学校低学年⏩子どもの性にかかわりのある言動によって発見されることが多い。
 中・高校生 ⏩子どもが信頼できる人に告白(相談)することが多い。

養護教諭は、子どもから告白や相談を受ける機会が多い立場にあります。

性的虐待の告白があった際は、下記の点について留意しつつ、適切に対応しましょう。

<養護教諭が、性的虐待に対応する時の留意点>
① 子どもの話をしっかり受け止める(受容的態度)。
② 子どもが性的な虐待を受けていることを話すには、心理的な苦痛・恐怖・不安と
  決死の思いをもって話していることを理解する(共感的態度)。
③ 打ち明けられた話の内容に驚いて過剰な反応をしすぎない。
  (子どもは告発の重大さに驚き、虐待について語ろうとしなくなってしまう。)
④ 子どもの言葉をそのまま記録しておく。
⑤ 一度認めた虐待の証言が撤回されることもしばしばあることを認識しておく。
⑥ 管理職等関係者と協議の上、速やかに児童相談所などの専門機関に連絡する。

  養護教諭のための児童虐待対応の手引 第3章 児童虐待の早期発見・早期対応


性的虐待の被害にあった子どもは、加害者に対する裏切りの気持ちや罪悪感、恥辱感、自分の身を守れなかった罪の意識などをもっています。
そのため、子どもに罪はないことや子どもを守ることを話し、安心させることが大切です。

また、子どもから「誰にも言わないでほしい」と口止めされる可能性があります。
その時にも、「他の人には言わない」という約束は絶対にしないでください。

養護教諭が黙っていることで、対応が遅れ、事態を悪化させる可能性があるからです。

「あなたを守るためには、他の人の助けを借りることが必要である」ことを伝えて、管理職や担任の先生に情報提供することができるようにします。早急に対応することが必要です。 

学校の責務3.通告後の関係機関との連携

通告後も、学校は、児童相談所を中心に関係機関と連携して対応する必要があります。
法的根拠は以下の通りです。

定期的な情報提供(児童虐待防止法第 13 条の 3)
児童虐待に係る通告を行った児童生徒等について、通告後に市区町村又は児童相談所に対し、定期的な情報提供を行うときは、「学校等から市区町村又は児童相談所への定期的な情報提供について(通知)」(21 文科初第 775 号平成 22 年 3 月 24 日)を踏まえ、適切な運用に努めること。

緊急時の対応(児童虐待防止法第 6 条)
上記に係る、定期的な情報提供を行っている場合であっても、学校等において不自然な外傷、理由不明又は連絡のない欠席が続く、児童生徒等から虐待についての証言が得られた、帰宅を嫌がる、家庭環境の変化など、新たな児童虐待の兆候や状況の変化等を把握したときは、定期的な情報提供の期日を待つことなく、適宜適切に市区町村又は児童相談所等に情報提供又は通告をすること

学校のスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等とも連携して対応する必要があります。日本学校保健会の対応マニュアルを確認してください。
参考リンク⏩:子供たちを児童虐待から守るためにー養護教諭のための児童虐待対応マニュアルー(平成26年版)

採用試験に出やすいところ。最新情報をチェック!

近年、文部科学省は、「『児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策』の更なる徹底・強化について(2018年2月)」を受けて、児童虐待に係る情報の管理関係機関との連携に関する新たなルールを定めました。

次の3点について対応するよう求めています。必ず確認しておきましょう。

① 学校等及びその設置者においては、保護者から情報元に関する開示の求めがあった場合には、情報元を保護者に伝えないこととするとともに、児童相談所等と連携しながら対応すること。

② 保護者から、学校等及びその設置者に対して威圧的な要求や暴力の行使等が予測される場合には、速やかに市町村・児童相談所・警察等の関係機関や弁護士等の専門家と情報共有することとし、関係機関が連携し対応すること。

③ 要保護児童等休業日を除き、引き続き7日以上欠席した場合には、理由の如何にかかわらず速やかに市町村又は児童相談所に情報提供すること。

教員採用試験で問われやすい箇所なので、要チェックです。